従業員エクスペリエンスとは?

従業員エクスペリエンスの追跡・改善が、業務パフォーマンスと効率の向上につながります。

業界を牽引する立場でなくても、「お客様は常に正しい」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。Marshall Field や John Wannamaker、Harry Gordon Selfridge のような小売業の先駆者たちがビジネスの最優先課題として顧客満足度を掲げるようになって以来、世界中の企業がカスタマーエクスペリエンスに重点を置いてきました。

顧客がビジネスの生命線であることは事実ですが、それだけが成功の要因ではありません。「従業員」のことも考えなくてはならないのです。

従業員はビジネスを運営し、日々の業務に力を注ぎ、ブランドの顔として活躍しています。製品を生産し、サービスを提供し、カスタマーサービスやカスタマーサポートという重要な役割を果たしており、インサイトの貴重な情報源でもあります。そのため、多くの企業が「従業員エクスペリエンス」を将来の成功を占う強力な指標として認識し始めています。

しかし、従業員エクスペリエンスとは何でしょう。また、従業員に重点を置くとビジネスにどのようなメリットが生まれるのでしょうか。

従業員エクスペリエンスの定義

従業員エクスペリエンスという言葉は、従業員が会社の中で過ごしている間、それぞれのタッチポイントでどのように考えたり感じたりしたのかを表します。従業員に満足してもらい、会社に定着してもらうことをゴールに設定し、そこまでに従業員がたどる過程全体を従業員エクスペリエンスと呼びます。

従業員ジャーニー

こうして従業員に重点を移したのは、単なる思い付きではありません。よく知られている事実ですが、仕事にやりがいを感じ、熱心に仕事をこなしている従業員ほど、自然と生産性が高くなり、結果的に最大で 31% も生産性が向上します。しかし、新入社員の 85% は、入社当時に持っていた熱意を、時間の経過とともに失っていくという傾向を見せています。

従業員のエンゲージメントが低下していくと、企業に悪い影響が及びます。実際、Gallup 社の『State of the American Workplace』という最新のレポートによると、従業員エンゲージメントの低下に伴い、米国全体の企業の生産性が下がり、年間で総額 4,830 億ドルから 6,050 億ドルに相当する損失を招いている可能性があるということです。

従業員のエンゲージメントは、ビジネスのあらゆる側面に影響を与えます。つまり、従業員エクスペリエンスは極めて重要ということです。事実、Deloitte 社の『2021 Global Human Capital Trends』によると、経営者の 80% が、従業員の福利厚生は企業の成功にとって「重要」または「非常に重要」と認識しています。

従業員エクスペリエンスの影響を受けるのは、たとえば次のような点です。

従業員エンゲージメント

「従業員エンゲージメント」は従業員エクスペリエンスとよく似ていますが、実際には別物です。

「従業員エンゲージメント」とは、従業員が仕事をして報酬を得るうえで、どの程度の熱意をもって献身的に取り組んでいるのかを表します。エンゲージメントの高い従業員ほど生産性が高く、会社を肯定的に捉える傾向があり、エンゲージメントの低い従業員ほど生産性が低く、会社を否定的に捉える傾向があります。つまり、従業員のエンゲージメントを高めることが目標であり、「従業員エクスペリエンス」を追跡して改善することが、従業員エンゲージメント向上のための戦略となります。

従業員エンゲージメントの良し悪しが、生産性や離職率など、ビジネスの成功を測る重要な指標に直接的にかかわってくるのです。

採用

従業員が会社で嫌な体験をしたとしても、それが長く尾を引くことはめったにありません。しかし最近では、通信技術が発達し、ソーシャルメディアやレビューサイトの選択肢が増えてきたことにより、従業員はさまざまな場所でうっ憤を晴らすことができるようになっています。SNS などに掲載された悪いレビューは、企業の人材募集に大きなダメージを与えかねません。

Fractl 社の最近のサーベイによると、求職者の 3 人に 1 人は、その会社に関するオンラインのレビューを見て内定を辞退した経験があるそうです。従業員エクスペリエンスが良いと、現社員や元社員がネガティブなレビューを投稿することも減るため、優秀な人材を引き寄せるチャンスが増えます。

定着

スキルの高い従業員が入社し、ビジネスを支えてもらえるようになったときの最優先事項の 1 つは、その従業員に「定着」してもらうことです。従業員の後任者を探してトレーニングするためには、年収の 3 分の 1 のコストがかかるとされています。従業員のオンボーディング、トレーニング、モチベーション向上、継続的なエンゲージメントを適切に行えば、優秀な人材を長く会社に引き留めておくことができます。

収益

優秀な人材の採用、エンゲージメント、定着を図ることはどれも、ビジネスを成功させるうえで欠かせない要因ですが、これらはすべて「お金」というただ一つの本質的な指標に帰着します。前述したように、ポジティブな従業員エクスペリエンスは生産性を押し上げるため、収益が増加します。さらに、仕事にやりがいを感じている従業員は、仕事の正確性が 19% 高く、営業成績が 37% 高くなるということもわかっています。

まとめると、従業員エクスペリエンスの向上が業績アップの最大の対策であるということです。

従業員エクスペリエンスは、従業員が会社で過ごしている間に体験した出来事、インシデント、感情などをまとめたものです。これを念頭に置いたうえで、従業員ライフサイクルの各段階における従業員エクスペリエンスを正確に測定し、数値化する方法を知っておくことが重要です。

従業員ライフサイクル

求人段階

求人プロセスは往々にして、応募者が会社とその文化に初めて触れる出会いの場となります。つまり、最終的に採用することに決めた応募者だけでなく、採用を見送ることになった応募者に対しても、最初のうちからポジティブな従業員エクスペリエンスを植え付けるチャンスとなります。

応募者との面接が一段落した後も、引き続き連絡を取って、参考になりそうなフィードバックを収集します。応募プロセス、面接、応答時間などが、企業に対する応募者の受け止め方にどのような影響を与えるのかを知ることができます。

オンボーディング段階

従業員の採用が決定したら、次のステップは、自分のポジションに慣れてもらうことです。オンボーディングプロセスには、オリエンテーションのほか、新入社員を経験豊富な従業員に育てるための包括的なプロセスも含まれます。人事の専門家によると、オンボーディングプロセスの期間は 1 年以上になることが多いようです。

新入社員がそれぞれの役割を割り当てられていくなかで、各自の状況を確認し、現在どのような思いを抱いているのかを正確に把握しなくてはなりません。多くの新入社員は、既存のプロセスや企業文化に対する批判を口にしたくないと考えているため、フィードバックを求める際には、ストレートに質問をぶつけるとよいでしょう。

Asurion 社がどのようにして優れたオンボーディングを実践して競争上の優位性を獲得したかをこちらからご覧ください。

成長段階

成長段階は、従業員が自分のポジションで独り立ちする段階です。この段階に入ると、新しい専門的なスキルを身に付け始め、社内でどのようなキャリアパスを築くかが見えてくるようになるでしょう。継続的にスキルを磨くように従業員を奨励し、その資質を発揮している従業員を認め報酬を与えると、ポジティブな従業員エクスペリエンスが生まれます。

このレベルに達した段階で的確なアンケートを行うと、従業員エクスペリエンスの状況を明確にできます。同時に、社内で不満の原因となり得る点をすべて洗い出す必要があります。たとえば、空きデスクや空き会議室、手が空いている社員を探すのに時間がかかったり、機器トラブルの解決や、会社に関する重要な情報の調査に問題が発生したりするようでは、成長している従業員の意欲をそぐことになりかねません。

定着段階

従業員が自分のポジションを確立し、本領を発揮し始めるようになると、いよいよ従業員ライフサイクルの定着段階に入ります。この段階に入ると、従業員エクスペリエンスの向上は、このようなトップレベルの従業員に満足感を与え続けることだけでなく、その役割に沿ったやりがいのある仕事を託すことも意味します。加えて、チーム内で肯定的で誠実な関係を築くように働きかけ、従業員のレベルに関係なくオープンなコミュニケーションを取れるように努める必要があります。

定着段階で得る従業員からのフィードバックは、これ以前の段階のフィードバックよりもずっと価値の高いものになるでしょう。この段階の従業員は、ビジネス、ブランド、顧客を理解しており、おそらく鋭い洞察力を持っています。対面での週次ミーティングや、パルスサーベイを実施すれば、定着段階の従業員エクスペリエンスを明確に把握することができます。

退職段階

従業員が別の場所で働く機会を選択すると、会社における従業員エクスペリエンスも終わりの段階に入ります。しかし、これで終わりというわけではありません。退職段階のエクスペリエンスが有益なインサイトをもたらし、今後の離職率を低減させるうえで参考になるかもしれません。

退職する従業員から継続的にフィードバックをもらうようにしましょう。退職理由を深く掘り下げていけば、優秀な人材が退職する要因となっている問題の解決につながる場合があります。可能な限り退職面談の場を設け、企業文化について忌憚のない意見を出してもらいましょう。退職しようとしている従業員は特に、組織内の問題について率直に語りたいと思っている可能性があります。この機を逃さずに、彼らの意見を聞き出すようにします。

従業員にとってのその他の転機

ソーシャルディスタンスの影響を考慮すると、対処する価値のあるその他の重要な段階がいくつかあります。在宅勤務への移行、長期間にわたる不在からの職場復帰、長期休暇の取得、リモートワークの導入、一時休暇、一時休暇後の復職はすべて、従業員にとって大きな転機となります。

他の段階と同様に、この転機で従業員からフィードバックをもらうことは、全体的な従業員エクスペリエンスを評価するための最善の方法であり、プロセスやポリシーの向上に活かすことができます。

従業員からのフィードバックに耳を傾け、潜在的な問題を特定することは、従業員エクスペリエンスを向上させる良い方法です。しかし多くの企業は、従業員が仕事にやりがいを感じ、熱意をもって仕事に当たることの重要性を考慮して、さらに一歩踏み込んだ方法を採用しています。それは、「従業員エクスペリエンス管理」という方法です。

従業員エクスペリエンス管理とは?

従業員エクスペリエンス管理とは、従業員ジャーニーに沿った各タッチポイントを向上させるためのツール、戦略、取り組みを指します。

言い換えれば、従業員エクスペリエンス管理は、従業員エクスペリエンスを詳細に分析し、タッチポイント、出来事、コミュニケーションが従業員の行動や態度にどのような影響を与えているのかを理解することです。従業員エクスペリエンス管理の最終的な目標は、従業員エンゲージメントを向上させ、それに伴う利益を得ることです。

従業員エクスペリエンス管理が重要な理由

従業員エクスペリエンスの向上という点で見ると、多くの企業はまだ道半ばの状況です。実際、ServiceNow の『Employee Experience Imperative』によると、従業員の 52% が、従業員エクスペリエンスの向上に雇用側が投資していないと考えており、55% が自分の意見や考え方が雇用側から重要視されていないと考えています。

このような信頼感の欠如に対処し、従業員が大切にされていると感じられる健全な職場環境を促進することが、従業員エクスペリエンス管理の最も重要な目標と言えます。さらに、効果的な従業員エクスペリエンス管理は、次のような点でビジネス上のメリットを生み出します。

  • 従業員オンボーディングの改善
  • 従業員定着率の向上
  • 従業員の生産性の向上
  • 従業員離職率の低減
  • 収益の増加
  • カスタマーエクスペリエンスの向上

当然のことながら、どの企業や従業員も、従業員エクスペリエンス管理に対する効果的なアプローチを確立するうえで、それぞれ独自の課題に直面することになります。そこで ServiceNow が提供するのは、従業員の満足度と生産性を向上させ、従業員エクスペリエンスを改善するための基盤となる、最高のソリューションです。

従業員エクスペリエンスの向上を目指す過程は、業界、企業文化、個々の従業員に応じて大きく異なりますが、それでも、ほぼすべての組織に応用できる、従業員エクスペリエンス向上のための施策がいくつかあります。

最優先事項の特定

従業員エクスペリエンスを向上させようとして、従業員ライフサイクルのすべての段階にまとめて一度に対処したくなることもあるかもしれませんが、一段階ずつ集中して対処する方がかえって成功する確率が高くなります。最も差し迫ったものから順番に、改善する従業員エクスペリエンスの優先順位を付けていきましょう。たとえば、1 年目で大量の従業員が離職した場合、オンボーディング段階に重点を置くとよいでしょう。

調査とデータ収集

従業員エクスペリエンスの向上には、信頼できるデータが不可欠です。優先的に取り組む段階が決まったら、次はフィードバックを収集する必要があります。従業員が何を体験しているのかを正確に把握するためには、信頼できる情報が大量に必要になります。無理をせずに、ゆっくりと慎重に進め、実用的なフィードバックを得られるようにします。

目標とする従業員エクスペリエンスの明確化

データを収集する際に、どのような従業員エクスペリエンスを目指しているのか、どの部分をターゲットにするのかなどの目標をしっかり決めておくことが重要です。目標とそれを阻む要因を明確に把握できれば、これから進めるべき手順がはっきりと見えるようになります。

対策の実行

受け取ったフィードバックに基づいて、組織のどの部分でトラブルが発生しそうかを特定できるはずです。このような情報を放置してはいけません。組織全体にかかわる大きな問題だけでなく、もっと細かい具体的な問題にも目を向け、従業員エクスペリエンスに悪影響を与える可能性がある従業員やチーム、部門、プロセスを特定します。その後、必要があれば適宜、変更を加えます。

フィードバックに基づく対処

フィードバックを受け取って何らかの対策を講じようとする際に、そのプロセスに関係者を必ず巻き込むようにしてください。フィードバックと戦略を共有するために定期的なコミュニケーションを取るようにすると、従業員と意思決定者が連携を取りながら従業員エクスペリエンスを向上させることができます。

定期的に評価する

問題となる部分を特定するためのデータ収集に時間がかかるように、問題解決にも時間がかかります。組織を強化するにあたって、既存のフィードバックツールを使って、戦略の効果を評価するようにしてください。そうすれば、必要に応じて適宜、軌道修正することができます。

継続的に見直す

従業員エクスペリエンスには、「これで終わり」というような、わかりやすい終わりはありません。従業員ライフサイクルの各部分、各段階を継続的に見直し、どのような従業員エクスペリエンスを提供しているのか再評価してください。

ビジネスの生命線が顧客だとしたら、ビジネスの「中心」は従業員です。求人から退職に至るまでの従業員エクスペリエンスを把握し、向上させることができれば、優れた企業文化を築くことにつながります。さらに、顧客に対するサービスも向上し、ビジネスが成長していくでしょう。

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