カスタマーエクスペリエンス (CX) とは?

カスタマーエクスペリエンスとは、顧客と企業間のあらゆるやり取りであり、製品やサービスと接するタッチポイントにおいて発生するものです。

顧客はカスタマーエクスペリエンス (CX) が良好なとき、リピーターとなり、ポジティブに評価する傾向があります。良好な CX のメリットには、他にもロイヤリティや顧客満足度の向上、顧客のお勧めなどの口コミによる市場評価の向上などがあります。

しかし、「良好な」カスタマーエクスペリエンスの定義は何でしょうか。良好なカスタマーエクスペリエンスは、ブランドとの間に良好な関係が築けたということだけを意味するわけではありません。顧客は通常、問題の解決といった成果を期待して企業に接触します。したがって、ポジティブなカスタマーエクスペリエンスは、そのような期待に応え、望ましい成果を得られることを意味します。逆に、期待に応えられなかった場合は、成果が得られなかったか、何らかの理由でカスタマーエクスペリエンスが成功しなかったということであり、顧客はネガティブなカスタマーエクスペリエンスを抱えたまま、そのブランドから離れていく傾向があります。

カスタマーエクスペリエンスの重要性を優先度別に表したグラフィック

ネガティブなカスタマーエクスペリエンスがもたらす影響

エクスペリエンスに悪い印象を持った顧客は、そのブランドに二度と関わろうとはしません。実際、米国では顧客の 32% が、ひいきにしていたブランドであってもたった一度悪い印象を持つと取引をやめるそうです (出典:PwC)。その結果、収益が低下し、口コミにより悪評が市場に広がり、レビューで低評価が付くことになります。ブランドの信頼はかなりのダメージを受けることになるでしょう。このようなエクスペリエンス悪化の一般的な原因は次のとおりです。

  • 購入プロセスが難解
  • 各チャネルでのカスタマーサポートの対応が悪い
  • セキュリティが緩い
  • サービスの待ち時間が長い
  • フィードバックに対する返信がない

提供しているエクスペリエンスに顧客は満足しているでしょうか。これは、答えを「はい」と「いいえ」で割り切れるほど単純な話ではありません。顧客がどの程度満足しているのか、あるいは満足していないのかを理解するためには、もっと深く掘り下げていく必要があります。これから、カスタマーエクスペリエンスを明確に把握するための方法をいくつかご紹介します。

顧客満足度アンケート結果の分析

CX の満足度アンケート結果を定期的に分析すれば、顧客とのさまざまなタッチポイントに加え、やり取りがどの程度成功しているのか、改善すべき点はどこかが明確になります。

顧客離れの比率と理由の特定

生涯にわたって 1 つのブランドを選び続ける顧客はほとんどいないでしょう。とはいえ、離れていった顧客の多くには、それなりの理由があるはずです。顧客が離れる原因となった事実を突き止めることが問題解決の糸口となります。組織は、解約率が上がるのか、下がるのか、現状維持になるのかを判断するために、顧客離れの分析を頻繁に行う必要があります。そうすることで、顧客離れの理由を判断し、同じ状況を繰り返さないために何らかの対策を講じられるようになります。

顧客に製品や機能に関する要望を聞く

顧客が抱いている思いを最も確実に把握する方法の 1 つは、顧客に直接聞くことです。エクスペリエンスに関して最も価値のある情報を持っているのは顧客です。フォーラムの開設、メールによる問い合わせ、コミュニティページの開設、ソーシャルメディアへの投稿というような方法で、フランクに話す場を設け、率直なフィードバックをもらうようにします。意見をもらい、その思いを汲み取り、コミュニケーションする機会を設ければ、CX の評価として最も信頼性の高い情報源の 1 つを得ることができます。

カスタマーサービスケースの傾向分析

問題の発生が一度きりであれば、単なる例外として片づけてもよいでしょうが、繰り返し発生するとなると、何らかの大きな問題が発生する兆候と考えられます。カスタマーサービスケースを確認すれば、現在発生している問題を直接的に深く追及できます。その機会を利用して、繰り返し発生する問題をすべて分析し、可能な限りの解決策を講じるようにします。そうすれば、新規顧客、リピーターともにカスタマーエクスペリエンスが改善され、問題解決能力があることを顧客に示すことができ、先々のバージョンの製品やサービスの向上につながります。同様に、カスタマーサービス以外の部門も、繰り返し発生する問題を詳細に分析することで利点を得られます。小さな懸念事項を根本原因まで追及するようにすれば、広範囲に影響が及ぶ可能性のある大きな問題を特定し、解決することができるからです。

もちろん、カスタマーエクスペリエンス向上の必要性を単に認識しただけでは不十分です。実際に向上させるには、まずそれを数値化できなければなりません。結局のところ、顧客満足度を決定する要因は数多くあり、これらの要因に伴って発生する問題を特定し改善できるかどうかは、エクスペリエンスを測定できるかどうかにかかっているのです。成功している企業は、自分たちの CX のレベルを正確に測定できるように、さまざまな指標を採用しています。

カスタマーエフォートスコア (CES)

顧客にサービスを提供するならば、どのような形であれ顧客の生活を豊かにすべきですが、顧客がサービスの使用に多大な時間や労力を費やさなくてはならないとしたら、当然マイナス評価になります。CES は、顧客が一通りのアクションを終えたときに、製品やサービスに対して、どの程度難しいと感じたか、簡単と感じたかを測る指標です。たとえば、「今回はどの程度簡単にニーズを満たすことができましたか?」という問いかけに対して、「非常に難しかった」から「非常に簡単だった」までの間でランク付けを行うようなやり方です。この手法をカスタマージャーニーの特定のステップで使用して、そのステップの効果を測定することもできます。

ネットプロモータースコア (NPS)

このスコアは、企業に対する顧客ロイヤリティのレベルを示します。NPS を判定するための質問としては、たとえば、「当社の会社/製品/サービスを、ご友人や同僚にどの程度勧めたいと思いますか?0 ~ 10 までの点数でお答えください」といったものです。

顧客満足度スコア (CSAT)

CSAT は NPS と同じように見えますが、製品に対する顧客自身の満足度を示すもので、他者に勧めたい程度を表しているわけではありません。例を挙げると、「あなたは製品やサービスにどの程度、満足していますか/あなたは製品やサービスに満足していますか?」という問いかけになります。回答方法は、「はい」、「いいえ」の選択肢にすることも、「非常に不満」から「非常に満足」までのランク付けにすることもできます。

解決までの時間 (TTR)

TTR は、お客様が問題やケースを提起してから、カスタマーサービスチームがそれを解決するまでにかかった時間の平均を表します。この測定値は、業界、製品、サービスなどに応じて、分単位から営業日数までさまざまなバリエーションを持ちます。このスコアは計算上の単位として使用でき、解決した問題やケースの件数で割れば、解決時間を改善するための信頼性の高い指標になります。

前述したように、カスタマーエクスペリエンスは単純に良し悪しで割り切れるものではありません。ほとんどの企業は、ある分野では成功していても、別の分野では目標を達成できていないものです。しかし、カスタマーエクスペリエンスに悪影響を与える可能性があると認知されている要因はいくつもあります。

プロセスの断絶

プロセスの断絶は、マーケティング、営業からカスタマーサービスに至るまで、顧客と企業との接点となる場所であれば、どこでも発生する可能性があります。プロセスが悪いと、たとえチーム間のやり取りであったとしても、カスタマーエクスペリエンスに悪い影響を与えます。プロセスの断絶は、カスタマージャーニーを中断させ、非効率性、不満、ケースのドロップなどにつながります。

不具合のある製品/サービスの放置

私たちは非常に複雑な時代を生きており、顧客は製品やサービスが常に完璧に機能するとは限らないことを理解しています。とはいえ、問題が見つかったら、できるだけ早く対処して解決してもらいたいと考えています。製品の欠陥などの問題を未解決のまま放置すると、間違いなく現在の顧客は離れていき、口コミで悪い評判が広がっていくことになるでしょう。

顧客に繰り返し同じ情報を尋ねる

顧客の問題の解決に複数のサポートエージェントが関わることもあります。しかし、ケースがエージェント間で引き継がれたとき、顧客は新しいエージェントに状況もきちんと引き継がれていることを期待します。エージェントが開口一番、顧客の名前、使用している製品やサービス、発生している問題について再度説明を求めるようでは、顧客はストレスを感じるでしょう。高度なカスタマーサービスシステムを活用すれば、引き継ぎプロセスが滞りなく進み、顧客とエージェントは停滞することなく、解決を目指せるようになります。

長い待ち時間

サービスの待ち時間が長いと、苛立ちが募るものです。顧客は、電話による担当者への連絡、ソーシャルメディアのコメントへの返答、問い合わせに対するメールの返信が数分以内に実行されることを期待しています。このような連絡手段が速やかに効率よく機能することを期待しているため、問題の解決にかかる時間が当初の予想よりも長引きそうな場合は、確定情報、最新情報、見込みを逐次知らせてほしいと考えています。

事後対応型のサービス

最近の顧客は、多くのデバイスが常に接続された状態になっているように、ビジネスを実施しているブランドが常に「オン」の状態であることを期待しています。これは、問題が発生したときに、企業から積極的にその情報が共有され、最新情報を把握できるとともに、サービスの中断による影響が最小限になることを顧客が望んでいるということです。一方、顧客自らが率先して問題を特定・報告しなければならない場合、それは事後対応型のサービスと呼ばれ、カスタマーエクスペリエンスが悪いという評価になります。

顧客のニーズを理解できない担当者

エージェントには、問題を正確に識別し解決できるように十分な技術トレーニングや製品トレーニングを受けることが求められます。しかしそれだけでなく、顧客に共感し、そのニーズを理解し、顧客との窓口になるための対人スキルが求められます。これはたとえば、顧客の漠然とした要求を解釈し、製品に関する専門的な知識のない顧客でも理解できる解決策を提案するといったスキルを含みます。

未解決の問題/質問

問題を抱えている顧客が連絡してくるのは、「解決策を提示してくれるだろう」という信頼があるからこそです。しかし、それができなければ、その顧客は信頼の気持ちを失くし、今後取引しようという意思も失ってしまうでしょう。理想を言えば、エージェントは問題をタイミングよく解決できなければなりませんが、問題に明確な解決策がない場合であっても、問題が解決するまで顧客に対応し続ける責任があります。顧客に打つ手がないと説明したり、さらに酷い場合だと、十分な説明もないままケースを放棄したりすると、ブランドの評判に取り返しのつかないダメージを与える可能性があります。

過剰な自動化/人間味の欠如

システムが自動化されていると、カスタマーサービスのプロセスが簡便化されますが、人間味や人間ならではの理解力の欠如につながる可能性があります。非常に高いインテリジェンスを備えたボットの能力以上のものを顧客が要求することもあります。サポートプロセスに、人間のエージェントと直接触れる選択肢がないとすれば、多くの顧客が不満を持つようになるでしょう。自動化でエージェントをサポートしながらも、人間による対応を排除しない、ちょうどいいバランスを見つけることができれば、サービスの幅が広がり、プロセスが円滑に進むでしょう。

人間味のないサービス

顧客は自分自身を尊重してほしいと考えています。ビジネスであれば、それは当然のことと言えます。個々の顧客のニーズに応え、嗜好や過去のやり取りを知ったうえでサービスをパーソナライズ、カスタマイズすると、個々の顧客は自分が尊重されていると感じるため、カスタマーエクスペリエンスの向上につながります。

横柄で態度の悪い担当者

担当者にとって不愉快な出来事があったとしても、顧客に横柄な態度を取っていいわけがありません。状況を好転させ、各顧客に対して親身に接し、助けようとする意思が顧客に伝わると、エクスペリエンスが向上します。ケースの重要性を強調すること、積極的に耳を傾けること、敬意を持ってプロとして対応すること、問題を提起し企業に気づかせてくれた感謝の気持ちを示すことは、どれも価値の高いスキルです。顧客の中には、ケースの対応中にずっと不機嫌な方もいますが、多くの顧客は、助けてくれたエージェントの親切さを覚えており、その企業に対してより好意的になります。その一方で、顧客のけんか腰の姿勢にエージェントが悪い対応を取ると、問題が大きくなるだけでなく、カスタマーエクスペリエンスを回復させるチャンスを逃すことになります。

ポジティブなエクスペリエンスを提供するうえで重要なのは、前述した多数の落とし穴にはまらないことですが、優れたカスタマーエクスペリエンスは、それ以上の意味を持ちます。エクスペリエンスがポジティブになるかどうかは、カスタマージャーニーの各段階で顧客の期待に応えられるか、または上回ることができるかにかかっています。

製品やサービスに期待できることの明確化

製品やサービスを提供するうえで、何が期待できるのかを管理し、その製品やサービスで何ができて、何ができないのか明確に示すことが重要です。製品ではできないことを「できる」と確約したり断定したりすると、カスタマーエクスペリエンスの低下につながります。

直感的な製品デザイン

問題を早く解決できれば、ポジティブなエクスペリエンスにつながりますが、問題に正面から取り組むほうが、よい解決策になります。製品のデザインが直感的に理解できるものであれば、顧客は習得に時間をかけずに、思う存分製品を使いこなすことができるため、問題の発生を未然に防ぐことができます。

オムニチャネルのカスタマーサービス

オムニチャネルのサービスでは、顧客は多数のチャネルやタッチポイントを通じてシームレスにインタラクションできます。また、該当する顧客の履歴情報は 1 か所で管理され、そこからアクセスできるようになります。このようにシームレスな連携は、カスタマーエクスペリエンスの一貫性を高め、企業とコミュニケーションする際に顧客が好きなチャネルを選べるなど、自由度も高くなります。

積極的なサービス

問題が発生するまで待っていてはいけません。製品やサービスの問題を特定・対処するために積極的に動くことが大切です。問題が見つかったら、その問題に関する情報と解決方法をメッセージングやアラートを使って顧客に伝達し、現状を認識してもらうようにします。また、すべての問題の検出と防止を促進するため、データと人工知能を活用します。

顧客の労力を最小限にする

顧客に必要以上の労力をかけさせないことが大事です。初回で問題が解決し、顧客にさまざまなタッチポイントを探す手間がかからないことが理想です。また、顧客が問題の解決策や問い合わせ先を調べるためにあれこれ探し回らなくても済むように、すべてのリソースをいつでも利用できるようにしてください。

顧客の目的を達成する

結局のところ、顧客の最大の関心事は、問題を効果的に解決できるのか、そして目標を達成できるのかです。顧客の目標を自分の目標に置き換えて、顧客と連携してどのケースでも確実に解決できるようにします。

  • カスタマーエクスペリエンスに対する明確なビジョンを持つ。
  • 顧客がどのような人物か把握する。
  • 顧客と感情を共有する。
  • カスタマージャーニーを綿密にマッピングする。
  • 顧客からのフィードバックにリアルタイムで取り込む。
  • 顧客に対応する際に、顧客の目標達成に重点を置く。
  • チームの成長 (継続的な改善) のために品質フレームワークを使用する。
  • 定期的な従業員フィードバックに基づいて行動する。
  • 問題の根本原因を突き止めて対処する。
  • 積極的にサービスを提供する機会を見極める。
  • 解決をスピードアップし、顧客の手間を減らす (チーム間で連携し、解決プロセスのステップを自動化)。
  • カスタマーエクスペリエンス向上施策の ROI を測定する。

CX はビジネスのあらゆる側面の成功に影響を与えます。顧客と直接コミュニケーションするかどうかに関係なく、全従業員がカスタマーエクスペリエンスの責任を担います。組織内のすべてのプロセスとシステムは、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供し、カスタマーエクスペリエンスチームの役割をサポートするものでなければなりません。

カスタマーサービスは、カスタマーエクスペリエンスの一部です。カスタマーエクスペリエンスは、それが直接的なものかどうかに関わらず、企業とのやり取りやその印象から形成された顧客の感情を指しますが、カスタマーサービスは、顧客との直接的なタッチポイント全体を指します。

  • セルフサービス
  • アンケート
  • 根本原因への対処
  • 積極的なサービス
  • ワークフロー (チーム間の連携と自動化)
  • データ連携

スムーズなカスタマーサービス

成果重視のソリューションこそが、企業の能力をフルに引き出します。